地方競馬場にて
Archilochus Tokiensis
|
|
"
|
跫音なんて難しい言葉は
鮎川の詩で初めて覚えたよ
ぼくには誰の遺言も託されていない
|
|
——そう気づいてしまってから
どの馬も嘘みたいにぴかぴかに
仕上がっている中央競馬には
足が向かなくなってしまったのだ
|
|
♪
|
"
|
地方競馬のパドックに集まる
人々は誰もかれもひとりきり
それでもレース前は一斉に動き出す
|
|
——おおその跫音の群れよ!
やがて馬たちの蹄がダートを
叩きつける音もそれに加わり
砂煙とともに駆けぬけるのだ
|
|
♪
|
"
|
♪
|
"
|
鞍上の人よ
どうしてあなたは回ってくるのか
走ることは生きること
それがあなたの乗っている生き物だから
|
"
|
♪
|
"
|
♪
|
"
|
♪
|
"
|
|
"
|
|
"
|
♪
|
"
|
ゴール板の前で二頭が僅差
小さなモニターに集まる視線
いま・ここでだけ一番に大きいハナ差だ
|
|
——「アーモウコリャ三番ダヨ!」
こうして三百年の伝統に
従って負け馬に賭けたぼくは
跫音のなかからひとり抜けだす
|
|
♪
|
"
|
♪
|
"
|
鞍上の人よ
ぼくはあなたをふりかえらなかった
生きることは走ること
それがぼくらすべての始まりなのだから
|
"
|
さよなら
本命も穴も信ずるに足りない
ただ信じられるのは
真実生きている彼らの跫音だけだ
|
"
|
♪
|
"
|