582742 / 萩原朔太郎 / mico
こころ心をば何にたとえん。
心はあぢさゐの花。
桃色に咲く日はあれど、
薄紫の思ひ出ばかりはせんなくて。
心はまた夕闇の
園生のふきあげ。
音なき音の歩む響きに
心は一つによりて
悲しめども悲しめども
ある甲斐なしや。
ああ
この心をば何に喩えん。
心は二人の旅人。
されど道づれの絶えて
物言うことなければ、
わが心はいつもかく寂しきなり。
心は二人の旅人。
されど道づれの絶えて
物言うことなければ、
わが心はいつも
心をば何にたとえん。
心はあぢさゐの花。
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